【音声読み上げ】
ED治療薬が心臓に悪いわけではない
古来の性行為に「接してもらさず」という言葉がある。そうすれば「血気がよく巡って体によい」と続くのですが、最新医学からすると全くの誤解です。
最新の科学的根拠による新常識では、精はもらせばもらすほど、射精すればするほど心臓にも血管にもよく、がんや生活習慣病を予防して寿命を延ばすというもの。逆に早くから性行為をやめた男性は、死亡リスクが上昇するという研究結果もあります。言い直せば、「しばしば交接し、大いにもらすべし」です。
男性不妊の治療現場では、出せば出すほど精子の運動率が向上し、活きがよくなることが知られています。体に悪いわけがありません。
しかし男性にも更年期障害があります。男性更年期の諸症状は、加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の減少が原因です。60歳を過ぎて、何となく憂鬱な気分に苛まれる、やる気が出ないといった症状と、「朝立ち」しない、性欲がなくなったなど性機能の変化を感じたら、更年期を疑うといいでしょう。
テストステロン補充療法も盛んで、日本では医療機関(主に泌尿器科)での注射のほか、街の薬局で塗り薬(第1類医薬品)を購入することができます。
男性更年期には明確な診断基準はありませんが、不調が続くようなら検査をしても良いかもしれません。劇的に諸症状が改善するケースが多いですから年だからと諦めず、ぜひ医療の力を借りてください。
中高年の性機能を巡るもう1つの都市伝説は、バイアグラ・シアリス・レビトラなどの勃起不全(ED)治療薬は心臓に悪いというもの。これは大いなる誤解を生じています。
もともとED治療薬は狭心症など血管が詰まる心臓の病気の薬として開発されました。その過程でEDに効くことがわかり、そちらにスイッチした経緯があります。
最新の研究では、ED治療薬を定期的に飲むと抗老化に働く抗酸化作用のほか、テストステロン産生が増加することもわかっています。
低用量のED治療薬を「男性のアンチエイジング薬として習慣的に飲むべきではないか」とも言われています。
EDの発症リスクの多くは、加齢のほか喫煙、肥満と運動不足などの不健康な生活と高血圧、糖尿病などの生活習慣病です。
不健康な生活の影響で動脈硬化が生じると、海綿体の血管が固くなって拡張不全を起こし、勃起を維持する血流を確保できなくなってしまうのです。
当然ですが、ペニスの血管だけが動脈硬化を起こしているとは考えられません。
男性の体のなかで最も細いペニスの動脈が真っ先に詰まった後は、2番目に細い心臓の冠動脈が、さらに脳に血液を運ぶ頸動脈と、ドミノ倒しのように心筋梗塞や脳梗塞を起こしかねないのです。実際、EDがある人では心血管系の病気による5年後の死亡率が2倍以上になるというデータも出ています。
一方、ED治療薬は、血管の拡張を促進する作用があります。EDではこの作用が勃起の持続に働き、全身の血管では動脈硬化の改善と進展予防が期待できるわけです。
参照 プレジデントオンライン